HOT-1は遠赤外線を利用した火入機です。
しかしそれが火入れ機としての最大の特長というわけではありません。
遠赤外線バーナーをお茶に向けてで照射をするだけでは火入れにはなりません。バイブの上に流れるお茶を単純に遠赤外線照射するだけでは、表面の一部分に火が入るだけです。
既存のドラム式火入れ機や、自動乾燥機にに遠赤外線バーナーを付けても補助的に遠赤効果が期待できるだけで、遠赤外線火入機とは呼べないと考えます。
熱源が何であれ、お茶をまんべんなく加熱することのできる構造かどうか、温度調整がしっかり出来る構造かどうかが問題になります。
HOT-1最大の特長はお茶の火入れに必要な環境コントロールが容易にできる原理と構造にあります。
荒茶の製造工程のなかで最も重要な工程、蒸し工程に例えるとわかりやすいかもしれませんね。世界で最高の蒸しの出来る蒸機はなにかと尋ねられた時、それはマイコン制御された高価な蒸機ではなく、昔ながらの蒸篭(せいろ)であると思います。
蒸篭では効率が悪いので蒸機という機械が誕生したわけで、能率をかんがえなければ、摘み取ったままの茶葉を蒸篭でおとなしく(叩いたり、高速で攪拌したりせず)自然のままに蒸しあげればいいと思います。
火入れでも同じで、能率を考えなければ、お茶をフライパンで炒めたり(ドラム式)、高温の熱風を当てたり(透気式)、電子レンジでチンしたり(マイクロ波)しないほうがいいと思うのです。
例えば、ホイロ(焙炉)の上に薄くお茶を広げ、均一な熱源でゆっくり温める。これが良い火入れの基本条件であると考えます。
ヒントは色彩選別機
色彩選別機とは色を判別するセンサーによってお茶の中から白い茎などの部分や異物を、細かく見て選別する装置です。この機械の場合もお茶が重なって層にした状態では良い選別はできないため、お茶を薄く広げ一葉一葉分離して流すような構造になっています。その中で異物を発見し排除します。
原理的に能率は良くありませんし高価な設備ですが、美しいお茶に仕上るためにこれに変わる機械は無く、日本全国の製茶問屋さんでこの色彩選別機を使用していないところはほとんどないほどのヒット商品です。
一葉一葉ていねいに流しながら棒を取るように、火入れ行うことも同等の能率を得ることは可能であると考えました。
HOT-1はこの基本原理を生かした火入機なのです。
HOT-1独自の遠赤外線バーナーは炭火加熱の特性に近つけるため、電磁波である遠赤および近赤外線により内部まで熱を浸透させるだけでなく放射熱による表面加熱も同時に行っています。
加熱のイメージとしては、ほいろの上にお茶を広げ、(下からではなく)、上に炭火が置かれてお茶を照射している感じといえばおわかりになるでしょうか。
実際の構造はほいろではなくお茶はトラフ(バイブ)上で振動しながら移動します。本物の炭火では不可能な精密な温度コントロールとトラフ(バイブ)上に放射される温度ムラを独自の放射熱反射装置により排除しました。
私たちスタッフが理想の火入機の熱源として遠赤外線を選んだ理由がおわかりいただけたでしょうか。
現在考えられる最適の回答が、炭火に最も近く、かつ熱源として温度が安定している遠赤外線バーナーだったのです。
ただし、遠赤外線バーナーを単純に取付けるだけでは問題が生じます。バーナー本体の照射部は10cm位の幅を持つだけなので、トラフの中心部と両端では照射距離に違いが生じ、温度差が生まれてしまいます。当然トラフの中心部が熱く、両側の縁の部分は少し温度が低い状態になります。
そこで考えたのがバーナー全体を覆う熱反射板です。
一見するとただのカバーに見えますが、熱反射を利用し、トラフに照射される直接の輻射熱と、反射熱のトータル熱量がどこも同じになるように設計されています。
またバーナーには少量の空気を混合して理想の燃焼状態を作り上げています。
これにより最適な燃焼と最少の燃料消費率を実現しています。
HOT-1はこのような地道な技術が凝縮された火入機なのです。