火入れといいますと、皆さんは無意識に
10kgか15kgのお茶をドラムに入れて・・・・
火入れ温度は何度で・・・、何分くらい・・・
と思い込んでしまいますが、
お客様がお茶を飲む時、急須に入れるお茶は5gか10gでこと足りるのですから、本当は手のひらにのる少しのお茶さえ火入れすればいいわけです。
多くともお店でお茶を買っていただける50gから100gをその場で火入れできれば最高ですね。
そんなことを言っても商売ですから、ある程度まとめて火入れしなければしょうがないですよね。
フライパンや釜でお茶を焙煎するのでは効率が悪いので、ドラム式にすれば10kgのお茶を一度に火入れできる。機械設計者としては当然の思考だったのでしょう。
そして10kgより15kg、20kg・・・・
バーナーもどんどん大きくしないと間に合わない・・・・
火力が強くなれば風ももっと強くしなければ・・・・・・
次第に大型化された結果、大きなお茶の塊に、より強火で、あるいは強い風量を使い火入れするようになりました。
お茶と熱源との距離がどんどん長くなりますから温度の伝わり方も悪くなります。
ドラムの内径は大きくなり、胴内の落下距離も大きく、茶葉は傷みやすく、ムラを防ぐために撹拌し、さらに茶葉を傷める結果に・・・・・
絶妙な温度コントロール可能な最新式のバーナーを装着しても、そのセンサーは一体どこに付ければいいのでしょう。
センサーの感知したその場所は広いドラム内の一か所にすぎません。
そもそも胴内の温度は均一なのでしょうか。
因みにドラム内の茶温そのものを測定することは意外に難しいです。お茶そのものの温度であるか、そのお茶を取り囲む環境温度であるかの判断がつきにくいためです。
そんなわけで、今までの火入れ機は『理想の火入れ優先』ではなく『効率優先』で設計されてきたと言っていいと思います。
昔から火入れは難しいと言われてきましたが、火入れを難しくしてきたのはその火入れ機の構造に原因があるのであって、火入れそのものが難しいのではないと感じています。
急須に入れる少量のお茶をよりおいしく飲むために、お茶をちょっと加熱して香りを楽しむ
火入れの本来の目的はそこにあったはずです。
どんな熱源であれ、少量のお茶であれば、弱火でゆっくり時間をかけて加熱し、悪臭を抜いてよい香りを引き出すことはさほど難しいことではありません。
従来の火入れ機も最大の問題は、能率の観点から、原料のお茶の層を形成してしまっていることです。
お茶を塊にしてしまってはどんな熱源でもムラになります。
火入れは原点に戻るべきだと感じます。