あなたは、ふどんなタイプの火入機がお好きですか?
あるいは、どれが一番良い機械と思われますか?
A~Dの中から選んでください。

A.回転ドラム火入機

B.透気式(キャピタラ式)乾燥機
C.マイクロ式火入機
D.遠赤外線火入機

どれも一長一短ありそうでちょっとわかりませんね。

それでは質問を変えますね。

あなたがもし生魚を焼くとします。たとえば旬の秋刀魚(サンマ)。
どの方法で焼きますか?

sanma04

A.フライパンで焼く(但し油は未使用) | 回転ドラム方式
B.熱風を当てて乾燥させる。 | 透気式
C.電子レンジでチンする。 | マイクロ派
D.遠赤外線レンジで焼く(又は炭火で焼く) | 遠赤外線

火入れについて皆さんにお尋ねしますと必ず『火入れは難しい』とおっしゃいます。

お茶の火入れは天津甘栗や落花生やコーヒーの焙煎のようには行かないのは、その火入れ対象が種や実ではなく、もともとは柔らかな葉や芽そしてやや硬い茎や、それらが粉となってしまった物が混然とした状態ですから当然でしょうね。

お茶の火入れとは極端に言うと生の魚を加熱するのと同じで、薄い表皮まあり硬い骨もあり柔らかい部分、水分の多い部分、少ない部分も満遍なく火を行き渡らせることです。しかもそれを一度に大量に処理しようとするとなおさら難しいわけです。

お茶は生魚ほどではありませんがもともとデリケートな組織をもった植物です。

加熱することにより荒茶が持っている5%程度の水分をゆっくりと表面に出し、2.7~3%程度にすることにより、

  1. 荒茶状態で吸収していたいやな臭いを吐き出し、
  2. 内部の本来お茶が持っている自然の香りを引き出すことができます。

これが火入れの本来の目的ですから、火入れの本質とはとは焦げ香をつけることではなく『お茶をじょうずに全体に満遍なく加熱する』のこと。まるで魚を焼くようにゆっくり加熱して傷をつけず、余り風を当てずに風味を残すことです。

A.回転式ドラム方式
お茶をフライパンで直火で焼くことはできますが非常に難しい技術です。葉の表面が焦げて硬化すると、内部の水分が葉表面に出るのを妨げてしまいます。お茶の内部に水分の残る原因になります。秋になって変質し変色してしまう秋落ちの現象です。いわゆる下級茶を大量に火入れするには適していますが上級者には不向きです。

魚でいえば表面は焦げ、中は生、カツオならうまくゆけばタタキが出来上がります。でもサンマは無理でしょうね。

B.透気式
お茶は熱風により乾燥します。火入れとして前半の水分を取る工程はいいのですが、後半の②の工程に問題があると思います。透気式といっても引き出し乾燥機であれば排気ファンを調整して(時には停止させて)丁寧に火入れすればよい結果が得られますが、自動乾燥機ではせっかくの良い風味の大半は排気されて粉塵や粉といっしょ飛んでいってしまいます。※棚が網ならよいですがキャタピラではフライパンと同じ直火加熱です。

※この件につきましては【碾茶の製造に携わる皆様へ】をご参考に。

サンマならカラカラに乾燥して保存食にはいいかもしれませんが晩御飯のおかずにはちょっと食べたくはないですね。

C.マイクロ波
電子レンジは内部の水分を引き出すには最適です。お茶の場合日持ちをさせるための装置としてはたいへん優れていると思います。硬くなったお餅をチンすると内部の水分が表面にゆっくり出て、みごとに元の柔らかなお餅に復活します。マイクロ波は構成する分子を振動させて熱を発生させるためお餅そのものが熱の発生源ともいえます。

しかし火入機として考えたときはどうでしょう。おいしい焼餅にしたくとも焼いた香りは出すことができません。(実際に市販されているほとんどのマイクロ波火入機は、別体のドラム型火入機が後工程に設置されています。上段のマイクロ波照射機と、下段のドラム型の火香付け機が二段積みにされた、一体構造となっているのが一般的です。)上段のマイクロ波でお茶の水分を効率よく抜き取りますが、そのままでは香りは全く出ないためです。

サンマを電子レンジでチンしてみてください。上手に芯まで加熱されますがお味のほうはいかがでしょうか。香りは出ますでしょうか。勇気のあるかたは試してください。

D.遠赤外線
遠赤外線はマイクロ波と同じ電磁波ですが波長はずっと短く、可視光線との中間の特性をもっています。ガスコンロの火で炙るより炭火で焼いたほうがおいしいことは魚や焼き鳥がお好きな方はご存知だと思います。これは炭火から出る遠赤外線の効果であることは広く知られるようになりました。石焼き芋も熱せられた石から出る遠赤外線が芋の内部から温めるため、おいしく焼きあがるわけです。ガスバーナーでファインセラミックを熱すると遠赤外線が発生する原理によりここ数年で高性能の遠赤外線バーナーが開発されるようになりました。

遠赤外線のこの先端技術をお茶の火入れに生かしたのが火入機HOT-1です。

遠赤外線バーナーを既存の火入機、例えば回転ドラムや透気乾燥機に単純に取り付けるのでは本来の効果は発揮できません。なぜなら既存の機械は熱を直火や対流(空気)によって加熱するのに適した構造になっているからです。

お茶同士を摺り合わせて傷をつけたり、むやみに風で吸引して香りやホコリを出す必要はありません。熱の伝わり方が全く違うのですから、本来は熱の特性に合わせた構造にすべきなのです。

サンマ